地域リハ活動に資するリハ専門職育成のための道標
昨今、多くのリハビリテーション(以下、リハ)専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)が回復期リハ病棟に集中的に勤務するようになった。そして県行政や市町村に従事するリハ専門職は極めて僅かである。このため多くのリハ専門職が患者・対象者の心身機能障害の改善に集中的に関わるが故に、ややもすると回復期リハ病棟誕生以前に比べて、関わる患者・対象者の“地域における生活”あるいは生活の場としての“地域のあり様”“地域特異性”などについて気にかけない、あるいは視野に入りにくい現状があるのではないか、という危惧を抱いてしまう。また専門職としての知識・技術を探求するが故に、多職種による協働のための情報共有やコミュニケーションなどが苦手となってしまう傾向もあるのではないだろうかと老婆心ながら心配する。
ところが我々が重視する“地域リハ活動”においては「家族とは?生活とは?家とは?地域とは?」など専門知識とは次元を異にした多くの課題について他の専門職や地域住民と共に考え・学ぶことが求められる。またリハ専門職としての視点、あるいは知識・技術に基づく支援力を生かしながらも、“高齢・障害児者や難病者などが安心・安全に、その人らしく、生き生きと地域社会の一員として、生活が続けられるように共に支え合う地域づくりに貢献していくことが期待される。まさに、このことはリハビリテーションに関わる専門職の究極の目標といっても過言ではないであろう。心身機能のみならず、「活動」そして「参加」をしっかりと視野に入れた関わりが求められる昨今、本テキストを通して地域でのかかわりを垣間見、そして実践の中から謙虚に地域リハマインドを学び、習得されんことを切に期待する。